教師期待効果(Pygmalion Effect)に関する正しい説明を以下に示します。
ア ローゼンタール(Rosenthal,R.)らにより,ハロー効果と名付けられた現象である。
- 誤り:ローゼンタールによる研究で明らかになったのは、教師期待効果(Pygmalion Effect)であり、ハロー効果ではありません。ハロー効果は、ある特定の特徴が全体の評価に影響を与える現象を指します。
イ 教師が児童生徒に対して期待する方向に,児童生徒の学業成績や行動が変化する現象である。
- 正しい:教師期待効果は、教師が児童生徒に対して持つ期待が、実際にその児童生徒の学業成績や行動に影響を与える現象です。ローゼンタールとジャコブソンの研究で示された通り、教師の期待が高いと、児童生徒の成績や行動も向上することが確認されています。
ウ ローゼンタール(Rosenthal,R.)らの実証的研究で,小学校のどの学年の児童にも見られる現象であることが示された。
- 一部正しいが不完全:ローゼンタールの研究では、特に低学年の児童に対して顕著な効果が見られましたが、すべての学年において一貫して観察されたとは限りません。
エ 児童生徒にプラスの方向にのみ働き,マイナスの方向には働かない。
- 誤り:教師期待効果は、プラスの方向に働く場合だけでなく、マイナスの期待も同様に児童生徒の成績や行動に悪影響を与えることがあります。
よって、正しい選択肢はイです。
教師期待効果(Pygmalion Effect)とは何か?
**教師期待効果(Pygmalion Effect)**とは、教師が生徒に対して持つ期待が、生徒の学業成績や行動に実際に影響を与える現象を指します。この現象は、1968年にロバート・ローゼンタール(Robert Rosenthal)とレノア・ジャコブソン(Lenore Jacobson)が行った研究によって広く知られるようになりました。
定義
教師が生徒に対して持つ期待が、直接的または間接的に生徒の自己評価や学業成績に影響を及ぼすことを意味します。この期待が高い場合、生徒の成績や行動が向上し、期待が低い場合、逆に成績や行動が悪化する可能性があります。
具体例
- 学業成績の向上: 教師が特定の生徒に対して「この生徒は優秀である」という期待を持つと、その生徒は実際に成績が向上することがあります。これは、教師がその生徒に対してより多くの注意を払い、肯定的なフィードバックを与えるためです。
- 行動の変化: 教師が生徒の行動に対して高い期待を持つと、その生徒はより積極的に授業に参加し、良好な行動を取る傾向があります。
メカニズム
教師期待効果は以下のようなプロセスで働くと考えられます:
- 期待の形成: 教師が生徒に対して期待を持つ(例:成績が向上するだろう)。
- 教師の行動の変化: その期待に基づき、教師が生徒に対してより多くの関心、支援、フィードバックを与える。
- 生徒の自己評価の変化: 生徒が教師の期待と関心を感じ取り、自信が高まり、自己評価が向上する。
- 成績や行動の変化: 生徒の自己評価の向上に伴い、実際の成績や行動が改善される。
影響
- プラスの影響: 教師が高い期待を持つことで、生徒の成績や行動が向上する。
- マイナスの影響: 教師の期待が低い場合、生徒の成績や行動が悪化する可能性がある。
研究と実証
ローゼンタールとジャコブソンの研究:
- 実験の概要: サンフランシスコの小学校で行われた研究で、教師に特定の生徒が「知的能力が急激に伸びる」と誤って伝えました。
- 結果: この誤情報に基づいて教師が期待を持った生徒たちは、実際に学年末に成績が向上しました。
まとめ
教師期待効果は、教育現場において非常に重要な現象です。教師が生徒に対して持つ期待は、生徒の学業成績や行動に直接的な影響を与えるため、教師は生徒に対して一貫して高い期待を持つことが推奨されます。
ハロー効果(Halo Effect)とは何か?
**ハロー効果(Halo Effect)**とは、ある特定の特徴や印象が、全体の評価に強い影響を与える現象を指します。これは心理学における認知バイアスの一つであり、評価の対象となる人物や物事の一部の特性が他の特性の評価に影響を与えることを示しています。
定義
ハロー効果は、特定の顕著な特質が全体の印象を歪める現象です。例えば、ある人物が非常に魅力的だと感じると、その人物の他の特質(例えば、知性や能力)も高く評価しがちになることです。
具体例
- 外見の影響: 美しい人やハンサムな人は、他の特質(例えば、知性、親切さ、能力)も高く評価されやすい。
- 職場での評価: 上司が特定の従業員に対してポジティブな印象を持っている場合、その従業員の全体的なパフォーマンスも高く評価される傾向があります。
メカニズム
ハロー効果は、人間の情報処理の簡便さに起因します。人は他者について判断を下すとき、すべての情報を一貫して評価するのではなく、目立つ特性に基づいて全体の印象を形成します。これは、認知資源の節約のために行われる自然なプロセスです。
影響
- ポジティブな影響: ハロー効果がポジティブな特質に基づく場合、その人や物事の全体的な評価が高くなる。
- ネガティブな影響: ネガティブな特質に基づく場合、その人や物事の全体的な評価が低くなる。
関連する研究
エドワード・L・ソーンダイク(Edward L. Thorndike): ソーンダイクは、1920年に「Constant Error in Psychological Ratings」という論文でハロー効果を初めて報告しました。彼は、軍人の評価において、上官の評価が兵士の全体的なパフォーマンスに影響を与えることを観察しました。
具体的な研究例:
- 教師の評価: 教師がある生徒を「良い生徒」として認識すると、その生徒の他の行動やパフォーマンスも肯定的に評価される傾向があります。
- 企業での採用面接: 面接官が候補者の第一印象(例えば、服装や話し方)が良い場合、その候補者の能力や適性も高く評価されることがあります。
まとめ
ハロー効果は、特定の特徴が全体の評価に大きな影響を与える現象です。これは、人間の認知プロセスにおける自然なバイアスの一つであり、さまざまな場面で観察されます。ハロー効果を理解することで、より公平でバランスの取れた評価が可能になるでしょう。
ピグマリオン効果(Pygmalion Effect)
ローゼンタール(Robert Rosenthal)とジャコブソン(Lenore Jacobson)が1968年に行った実証的研究、通称「ピグマリオン効果(Pygmalion Effect)」について説明します。この研究は、教師の期待が児童生徒の学業成績にどのように影響を与えるかを調査したものです。
実験の概要
目的: 教師の期待が生徒の学業成績や行動に与える影響を調べること。
方法:
- 参加者:サンフランシスコの小学校の生徒
- 手順:
- 学年の開始時に全生徒に知能テスト(Harvard Test of Inflected Acquisition)を実施。
- その後、ランダムに選ばれた生徒たちを「知的能力が急激に伸びる可能性が高い生徒」として教師に伝える(実際にはこの情報は偽りであり、選ばれた生徒の知能レベルは他の生徒と同じであった)。
- 学年の終わりに再度知能テストを実施し、成績の変化を比較。
結果
研究の結果、「知的能力が急激に伸びる」と期待された生徒たちは、実際に他の生徒よりも成績が向上したことが判明しました。この結果は、教師が特定の生徒に対して持つ期待が、その生徒のパフォーマンスや行動に実際に影響を与えることを示しています。
意義
この研究は教育心理学において重要な示唆を与え、以下のような結論が導かれました:
- 期待の自己成就予言(Self-fulfilling Prophecy):教師の高い期待が生徒の自己評価やモチベーションを向上させ、その結果として学業成績も向上する。
- 教師の行動変化:期待された生徒に対して教師がより多くの注意やフィードバックを与えることが、成績向上に寄与する可能性がある。
制約
この研究にはいくつかの制約もあります:
- 一過性の効果:長期的な効果については不明であり、短期的な観察に基づいている。
- 文化的差異:異なる文化圏で同様の効果が観察されるかどうかは不明。